ワークライフバランス
の価値観から紐解くチームビルディングのススメ 

Voice of Japan 04

3行でまとめると:

  1. ワークライフバランスの価値観は「イノシシ」「イルカ」「タカ」「ヒツジ」の4つに分類される
  2. チームを活性化させる鍵を握るのは、仕事とプライベートの二気筒ハイブリッドエンジン搭載の「イルカ」タイプ
  3. リーダーに求められるのは「ファシリテーション力」と「還元力」​

イントロダクション

グローバル化や技術革新によってビジネスモデルの複雑化やビジネスサイクルの短縮化など、私たちを取り巻くビジネス環境は、目まぐるしく変わりつづけ、これまでの成功事例には頼れないことが圧倒的に増えました。​

変化の大きな環境の中で、 「これまでにない新しい価値をいかに創出するのか」が重要なテーマとなっており、部門やチーム横断のプロジェクトやタスクフォースの発足させる企業も増え、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人と働くことが多くなっています。​

インターブランド・ジャパンでは、生活者オンラインコミュニティRIPPLEを通して、様々な年代からなる生活者300名と継続的な対話を行い、日々変化する暮らしの状況に合わせて人々の内面はどのように変化しているのか、理解を深めています。​

今回は、現在の生活者のワークライフバランスに対する価値観とその背景にある深層心理を深堀し、多様な価値観を持ったチームメンバーと共にチームワークを向上させ、仕事の生産性を高めるにはどうすればよいのか、そのためのチームビルディングのヒントを探ります。​

4つの特徴的なワークライフの価値観の構成因子​

コミュニティメンバーにワークライフバランスについて何を重視しているか、自身の中でお互いはどのような位置づけであるかを聞いてみた結果、ワークライフの価値観を構成する因子の組み合わせによって、特徴的な4つの価値観タイプに大別できることがわかりました。ここでは、4つの価値観タイプを動物になぞらえ、その特徴をご紹介します。​

興味深いのは、どんな人も4つの価値観因子を持っており、一緒にいる相手や環境によって、4つの因子の強弱が変化する点です。例えば、イノシシの価値観を強く持つ人でも、いつもイノシシなわけではなく、周りの状況によりヒツジ化したりします。​

実際のコミュニティメンバーの声と、コミュニティメンバーが描いた「仕事とプライベートの関係図」も併せてご覧ください。​

全タイプ共通する「チームとして高め合いたい」という想い

更に深くコミュニティメンバーの声を聞いてみると、誰一人として「一匹狼」として一人で黙々と働くことを志向しているのではなく、全タイプとも「チームとして高め合いたい」という共通の思いを持っていることが分かりました。​

対人模様は天気模様。​

「チームとして高め合いたい」とみんなが思っている一方で、実際の仕事の場面では、いつもうまくいくとは限りません。別の因子を持った動物同士で起こるバランス関係もあり、スムーズな仕事の進行の行く手を阻む場面も多いことでしょう。​

コミュニティ調査の結果から、それぞれの因子を持った動物たちが出会ったときの「心の中の声」を紐解きました。そこには、晴れたり曇ったり大荒れの天気模様が見えてきます。​

相手側のこうした「心の声」を紐解いていくと、チームで働く上でのそれぞれのタイプ毎の注意点は、下記となります。​

チームを活性化させるのは「イルカ」タイプ​

実際の仕事の場面では、チーム全体が停滞し、なかなかうまく進まないことも多々あるのではないでしょうか。​

チームを活性化させる鍵を握るのは、「イルカ」タイプです。ハイブリッドエンジン搭載の「イルカ」タイプの人は、他の全てのタイプの価値観を理解できる素地を持っており、掛け算思考も持ち合わせているため、チームの潤滑油として機能することができます。もしもあなたがリーダーの方で、チーム全体が停滞し、誰を中心にチームビルディングをしていくべきかお悩みの場合、「イルカ」タイプを中心に、再度チームをまとめていくと良いでしょう。​

尚、「自分はイルカタイプではない」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の中に「イルカ度」を取り入れることで、多彩な価値観を持つメンバーをまとめ上げていくことは十分に可能です。「イルカ度」を取り入れるには、イルカの思考の特徴である「私たちは~できる」「~したらもっとよくなる。」を意識し、常にチーム全体の最適解に目を配るのが近道です。​

チームを成功に導くリーダー「力」​

今まで、様々なタイプについてご紹介してきましたが、最後に、こうした様々なタイプのメンバーをまとめるリーダーに求められることとは何でしょうか。​

コミュニティメンバーからの声を紐解いて考察していくと、リーダーとして求められることは、「ファシリテーション力」、「還元力」の2つです。​

「ファシリテーション力」とは、様々なタイプのチームメンバーの個性や特徴を活かして解き放ち、支援し、促進する能力。リーダーとして共通の目的に向かってチームをまとめあげるときに特に意識しなければならない能力です。それぞれのタイプを見極め、やる気スィッチを適切に捉えることで、それぞれのポテンシャルを最大化し、チームの「力」を高めていくことを意識しましょう。​

「還元力」とは、チームメンバーに対して、適切にフィードバックする能力。この能力は、チームで働く際に、全ての場面で意識しなければいけません。チームメンバーがタスクを完了した時には、それぞれのタイプに合わせた適切なフィードバックでモチベーションを向上させ、また、チーム全体で大きな仕事を達成した際には、手柄を独り占めせずにチームメンバーそれぞれの働きをねぎらい、適切に評価することを心がけましょう。​

チームで仕事をするとき、「イノシシ」「イルカ」「タカ」「ヒツジ」の4つの分類とその特徴を思い出し、ヒントにしてください。

日下 貴美子 
Interbrand Japanストラテジーディレクター​

ブランディングファームでの経験は15年以上に渡り、プロダクトブランディングからコーポレートブランディング、テクノロジーブランディングやエリアブランディング等の幅広い経験を有する。ストラテジーディレクターとして、ブランド戦略策定から名称開発、ブランド体験構築、社内外コミュニケーション展開など、幅広く従事。2020年に発足したInterbrandグローバルネットワークのGroup Collaboration Task Force Teamの第1期メンバーとしても活動。​